ワイヤレスイヤホンが一般的になってきましたが、すでに購入した方や購入を考えている方から「思っていたよりあまり音が良くない」「ノイズが気になる」「歩いていると耳から落ちそう」という不満や不安の声が聞かれます。
しかし、音質主義SHURE初の完全ワイヤレスイヤホン「SHURE AONIC215」は、「音質」・「ノイズ」・「耳から落ちるかも」という問題を全てクリアした、まさに完全ワイヤレスイヤホンの決定版なのです!
そこで今回は、シュア・ジャパン株式会社(SHURE)から発売された左右分離型ワイヤレスイヤホン「SHURE AONIC215」の機能と魅力を徹底的にレビューします。
SHUREとは?
SHUREというメーカーをご存知でしょうか?少しSHUREの歴史を振り返ってみると、SHURE製品により引き込まれるかもしれません。
SHUREの歴史
SHUREと言えば、マイクをイメージされる方が多いかもしれません。しかし、もともとはSidney N. Shureが1925年の4月にアメリカのシカゴで、AMラジオ組み立てキットや、ラジオパーツ専門店として設立された個人経営の店舗でした。
1920年代と言えば、アメリカは大恐慌の時代。SHUREも大恐慌の影響で事業転換が必要になり、そこでマイクの製造へとシフトしたことで、今の「マイクと言えばSHURE」と言われる基礎が出来上がりました。
SHUREは、世界初のダイレクトメール・カタログを発送したり、それまで重くて高価だったマイクロフォン業界に軽くて値段も手ごろなSHURE製マイクロフォンを発売したりと、様々な革新をもたらしました。
その後も、スタジオクオリティのサウンドを追及する音質主義のSHUREのマイクは、様々なレジェンドアーティストからも注目・愛用され、ワイヤレスマイクロホン市場を牽引する世界的リーダーとしての地位を確立し、今ではプロ用の音響機器メーカーで業務用のマイクやイヤーモニター、ミキサーなど数々の機器を100年近く開発販売し続けています。
SHUREのイヤホンの魅力
しかし、今回注目するのはマイクではなく、完全ワイヤレスイヤホン「SHURE AONIC215」。マイクのイメージの強いSHUREですが、イヤホンはどうなんでしょうか?
実は、私たちはSHUREのイヤホンをテレビで頻繁に見ています。SHUREのイヤホンは高遮音性と耐久力、そしてなにより音質の良さゆえに、様々なミュージシャン間で「イヤーモニター(イヤモニ)」として広く活用されているのです。
イヤーモニターとは、主に巨大ライブなどで、ギターのサウンドやドラムやベースのリズム、ボーカルの声をまわりの大きな音に邪魔されずに、それぞれのミュージシャンが個々の音を聴く補助として用いられます。
イヤーモニターはその使用上、まわりの音をできる限り遮音し、クリアなオリジナルサウンドを届けなければいけません。しかも、音のプロの耳に届けるわけですから、プロフェッショナルの間でメジャーに用いられているSHUREのイヤホンの音質や性能は折り紙つきです。
完全ワイヤレスイヤホン「SHURE AONIC215」
マイクロフォンやイヤーモニターなどのオーディオ機器開発で100年近く培ってきた音質主義SHURE。
それらの技術を詰め込まれたSHURE初の完全ワイヤレスイヤホン「SHURE AONIC215」の機能と魅力を早速見ていきましょう。
「SHURE AONIC215」のスペック

出典:SHURE
基本仕様
・接続タイプ:ワイヤレス
・装着方式 :完全ワイヤレス(左右分離型) 構造
・駆動方式:ダイナミック型 プラグ形状
・インピーダンス: 17 Ω
・音圧感度 :107 db
・再生周波数帯域 :21Hz~17.5kHz
・充電端子:充電ケース:USB Type-C
・使用温度範囲:-10°C ~ 50°C
・充電温度範囲:10°C ~ 45°C
・全体質量:20.8g(片耳約10g)
・カラーパターン:クリア、ブラック、ホワイト、ブルー
・Bluetoothバージョン:Ver.5.0
・最大通信距離:約10メートル
・連続再生時間:8時間
付属のキャリングケースから3回の追加フル充電ができるため、最大32時間の再生が可能
・充電時間:2時間(15分の充電で約4時間再生可能)
・対応コーデック:SBC、AAC、aptX
・外音取り込みモード(環境モード)
・専用アプリによる音質調整などのカスタマイズ
・リモコン(プレーヤー本体を取り出さずにイヤホンで操作可能)
「SHURE AONIC215」の同梱品

出典:SHURE
「SHURE AONIC215」には、以下の付属品が同梱されています。
・完全ワイヤレス・セキュア・フィットアダプター
・充電ケース
・フォーム・イヤーパッド(3種類)
・シリコン・イヤーパッド(3種類)
・USB-Cケーブル(110㎝)
・取扱説明書
「SHURE AONIC215」の魅力
満を持して発売された音質主義SHURE初の完全ワイヤレスイヤホン「SHURE AONIC215」。
なぜ完全ワイヤレスイヤホンの決定版と言えるのか?音質にこだわるSHUREだからこその高音質への試みや、その他の魅力からご説明します。
ただの耳掛けではない!完全ワイヤレス・セキュア・フィットアダプター

出典:SHURE「RMCE-TW1」
耳掛けタイプの完全ワイヤレスイヤホンはいくつもありますが、SHUREの完全ワイヤレスイヤホン「SHURE AONIC215」の耳掛けは、ただの耳掛けではありません!
この耳掛け、実は「RMCE-TW1」という完全ワイヤレス・セキュア・フィットアダプターと呼ばれる別もの。つまり、「SHURE AONIC215」とは「SE215」というSHUREのイヤホンと「RMCE-TW1」というアダプターが一緒になったものなんです。

出典:SHURE「SE215」
完全ワイヤレス・セキュア・フィットアダプター「RMCE-TW1」には、アンテナとBluetoothレシーバーとリチウムイオン電池、集音マイク、操作ボタンが搭載されています。
「SHURE AONIC215」に限らず、「RMCE-TW1」はMMCXコネクター(micro miniature coaxialの略で同軸コネクタの一種)対応なので、SHUREのリケーブル(ケーブルを交換、取り外し)対応のイヤホンであれば、どのイヤホンでも完全ワイヤレスイヤホンにできるという優れもの。
音質を向上させるアダプター「RMCE-TW1」
もちろんこの耳掛け基完全ワイヤレス・セキュア・フィットアダプター「RMCE-TW1」のメリットはそれだけではありません。
このアダプターにより「SHURE AONIC215」は他の完全ワイヤレスイヤホンと比べ音質が格段に良くなるのです。なぜ音質が良くなるのかは、完全ワイヤレスイヤホン特有の音質を悪化させ得る障害を考えるとわかります。
- 音質を悪化させ得る障害①「バッテリーとBluetoothからのノイズ」
音は、電気や電波の影響をダイレクトに受けます。電気は余計なノイズを生み出し、音を劣化させてしまいます。今までワイヤレスイヤホンを使用しておられる方は、音が鳴っていないと時に「サーッ」というノイズ音がイヤホンから聴こえた経験はないでしょうか?
それは、イヤホンの内部構造の中にリチウムイオン電池の電気やBluetoothレシーバーから発生する電波ノイズの影響を受けているからです。もちろんその影響は音が流れているときも続いています。
- 音質を悪化させ得る障害②「完全ワイヤレスイヤホンの形状」
完全ワイヤレスイヤホンはそのコンパクトなサイズゆえにハウジング内部に「リチウムイオン電池」と「左右のイヤホンをつなぐアンテナ」、「音を鳴らすドライバーユニット」、「Bluetoothが搭載された基板」があり、そのうえ残った空間に音響用の空間を確保しなくてはいけません。
音は振動で発生しますので、すべてをコンパクトにまとめたゆえの空間の少なさは、豊かなサウンドを生み出すうえで大きな障害となってしまいます。
これらの音質が悪くなる原因を全てクリアしているのが「SHURE AONIC215」です。
「SHURE AONIC215」は、リチウムイオンバッテリーとアンテナ、Bluetoothレシーバー部分をアダプターとして「RMCE-TW1」に搭載し、音を鳴らすドライバーユニットが搭載されているイヤホン部分「SE215」と別々にしました。
これによりノイズや完全ワイヤレスイヤホン特有の空間やノイズなどの問題をクリアして、より高音質を実現しています。まさしく音質主義SHUREならではの音へのこだわりです。
もちろん耳掛けとしても優秀
耳掛けタイプの完全ワイヤレスイヤホンは耳が痛くなるイメージがありますが、「SHURE AONIC215」を耳に掛けると、耳にかかるテンションはわずかで、耳の裏側に回り込んだアダプター部分があごの付け根で安定してフィットします。
「SHURE AONIC215」はミュージシャンがステージで使用しているイヤーモニターと同じ設計を採用しているので、ランニングやダッシュなど激しく動いてもイヤホンが外れにくいので、「耳から落ちるかも」と思うことはありません。しかも痛みがないので、長時間使用しても快適な装着感が持続します。
「SHURE AONIC215」の操作もアダプター
「SHURE AONIC215」の操作もアダプター部「RMCE-TW1」で行います。操作はタッチ式ではなく、ボタン式。耳にかけた時、耳の後ろ側にくる部分で操作します。
最初は慣れが必要かもしれませんが、耳に押し込むような操作方法ではないので、耳が痛くなりません。ボタンは両側に配置されていて、どちらでも同じ操作が可能です。

出典:マニュアルスキャン
操作方法一覧(両ボタン共通)
・電源オフ・・・充電ケースに収納もしくはボタン長押し(耳に装着している場合“Power Off”と聴こえます)。
・ペアリングモード・・・電源オンの後5秒間ボタンを押し続け”Bluetooth pairing mode”と聴こえたら手を放すとペアリングモード起動。
・再生/停止・・・ボタンを1度押す。
・電話に出る/切る・・・ボタンを短く押す。
・着信を切る・・・ボタンを長く押す。
・環境モードオン/オフ・・・ボタンを素早く2回押す。
・SiriやGoogleアシスタントをオン・・・ボタンを3回押す。
・ペアリング済のリストを消去・・・充電ケースに入れて両方のボタンを7秒間押す。
32時間の長時間連続再生可能
「SHURE AONIC215」の連続再生時間は8時間!加えて充電ケースから3回分フル充電できるので、合計連続再生時間は32時間です。片道1時間の通勤通学で使用してもほぼ一ヶ月充電せずに使用できます。
他の完全ワイヤレスイヤホンのようにバッテリーと一体になっていない「SHURE AONIC215」は単体で8時間という長時間連続再生というメリットも生み出しています。
AVアンプ・プリメインアンプの音を聴くのもおすすめ
スマートフォンや音楽プレーヤーなどの音楽を聴くがメインな方が多いかもしれませんが、再生周波数帯域が21Hz~17.5kHzと広い「SHURE AONIC215」は、Bluetooth出力機能のあるAVアンプ、プリメインアンプの音を聴くのもオススメです。
DENONの「AVR-X1600H」やMarantzの「NR1710」の音を聴くとより豊かな音楽ライフに出会えます。
「SHURE AONIC215」の音の特徴
気になる「SHURE AONIC215」の音の特徴ですが、クラシック、ジャズ、R&Bなど様々なジャンルを視聴してみたところ、低音域はイヤホン部分の空間をドライバーユニットとしての機能をフルに活用できるためか、非常に豊かな印象。
ドライバーユニットのパワーによる低音域の圧と言うよりも、イヤホンの空間から生まれる余裕のある低域と言った感じで、全体的な音を底上げしてくれています。
中音域は、程よい抜け感と厚みがあり、それぞれの楽器の持ち味やボーカルの声を鮮明に鳴らしてくれる。定位がしっかりしているので、楽器がどこで鳴っているのかイメージできます。
高音域は、一般的なBluetoothイヤホン、完全ワイヤレスイヤホンとは一線を画す出来栄え。ハイトーンボイスやバイオリン、シンバルの響きなどは素晴らしいの一言につきます。SHUREのワイヤードのイヤホンと比べても遜色のない、さすが音質主義のSHUREの完全ワイヤレスイヤホンです。
プロフェッショナル仕様の高遮音性
音質主義SHURE初の完全ワイヤレスイヤホン「SHURE AONIC215」には、最近の完全ワイヤレスイヤホンにほぼ搭載されている「ノイズキャンセリング機能」が搭載されていません。
それもそのはず、上述した通りSHUREはプロフェッショナルのミュージシャンたちに高遮音性が求められるイヤーモニターとして重宝されているメーカーなのでノイズキャンセリング機能は必要ありません。
「SHURE AONIC215」ももちろん遮音性が非常に高く、その性能は周囲の騒音を最大37dBも遮断。耳に装着した時点でまわりのノイズの90%が聴こえなくなります。
もはや耳栓レベルの遮音性とフィット感を実現しているので、音漏れの心配もほぼありません。また「SHURE AONIC215」は小さなボリュームでも音がはっきりと聴こえるので、より音漏れの心配をする必要はありません。
外音取り込みモード+イマーシブオーディオ
「外音取り込みモード」も本来ノイズキャンセリング機能とセットで搭載されていることが多い機能です。しかし、「SHURE AONIC215」のフィット感は耳栓並みに周りの音が聞こえないので「外音取り込みモード」が搭載されているのです。
「SHURE AONIC215」の「外音取り込みモード」は、耳掛けの部分に2か所、両側で合計4か所に小型マイクから集音した音を適切なボリュームで使用者に届けるという機能。

イマーシブオーディオのイメージ
また、「SHURE AONIC215」はその高遮音性とゆえにイマーシブオーディオを実現しています。イマーシブオーディオとは二つのイヤホンから流れる音だけで、全方向から音に包まれている感覚にする機能。
是非、ライブ音源などを「SHURE AONIC215」で聴いて、この感覚を実際に体感してみてください。
「SHURE AONIC215」のBluetooth機能

出典:Bluetooth.com
「SHURE AONIC215」のBluetoothのバージョンは5.0。バージョン5.0は以前のバージョンと比べさらに「通信範囲」と「転送速度」が大幅に改良されています。
バージョン4.2と比べると、「通信範囲」は4倍、「転送速度」は2倍になっていますので、情報量の多いハイレゾ音源でもロスなく送ることができます。
また、YouTubeなどの映像を見ているときに映像に対して音声の遅延が気になるのがBluetoothの難点。しかし、「SHURE AONIC215」のBluetoothのコーデックにはatp-Xも含まれるため、遅延はほぼありません。
atp-Xは、圧縮率がSBCと比べて格段に少ない為、音域が消える事も少なく、高品質な音を楽しめます。またタイムラグもほぼ無くなっている為、動画と合わせても違和感を覚える事はありません。
実際「SHURE AONIC215」を使用してみたところ、人が口パクになって音声とズレるなどの遅延はみられませんでした。昔からワイヤレスに注目しているSHUREに隙はありません。
SHURE専用モバイルリスニングアプリ「ShurePlus PLAY」

「ShurePlus PLAY」トップ画面
「SHURE AONIC215」には、イヤホンのカスタマイズや操作が可能な音楽再生アプリ「ShurePlus PLAY」というアプリがApp Store、Google Play Storeから無料で入手できます。
このアプリがなかなか優秀です。FLACなどロスレス音源を含む様々なフォーマット/ハイレゾ音源に対応するのはもちろん、イコライジング機能が搭載されているので、自分好みのトーンに調整できます。
オリジナルのイコライジング作成が可能

「ShurePlus PLAY」イコライザ
そもそも「SHURE AONIC215」の音質はプロフェッショナル使用で満足度の高いものですが、音はどうしても個人の好みがわかれるもの。
「ShurePlus PLAY」ではプリセットリストから自分の好みの音を選択したり、カスタムプリセットからオリジナルのプリセットを作成することも可能です。

「ShurePlus PLAY」カスタムプリセット画面
カスタムプリセットでは大きく分けて4か所の周波数を1Hzの単位で調整でき、ゲインとバンド幅(Band width)も0.1単位で調整が可能。カスタムプリセット名も自由に編集できます。
自分好みのトーンを設定して「SHURE AONIC215」から聴くことができます。さすがプロフェッショナル御用達のSHUREです。
外音取り込みモードの音量調整機能

「ShurePlus PLAY」音楽プレーヤー画面
音楽プレーヤー画面もシンプルで見やすく使いやすいデザインなので、初めてでも困ることはありません。また、先ほど触れた「外音取り込みモード」の音量調節もこのアプリで行えます。
この機能により、高遮音性の「SHURE AONIC215」は耳栓以上の役割を果たします。ライブなどで音が大き過ぎたり、騒音が酷くても、アプリで取り込む音を調整することで、自分の耳に最適な音量で音を伝えることができます。
「SHURE AONIC215」のまとめと総評
今回は、SHUREから初めて発売された完全ワイヤレスイヤホン「SHURE AONIC215」の機能と魅力をご紹介してきました。
音質主義のSHURE、完全ワイヤレスイヤホンの分野でもプロフェッショナルの耳を満足させるほどのクオリティーの高い音質でした。最後に完全ワイヤレスイヤホン「SHURE AONIC215」の総評をまとめておきたいと思います。
・高遮音性(ノイズ90%カット)。
・外音取り込みモードの利便性。
・32時間連続再生。
・今までのSHUREのイヤホン(MMCXコネクター対応)も活用できる。
・低遅延、安定接続
・専用アプリでのカスタマイズ
・シンプルな操作方法
・耳にしっかりフィットする安定感
しかし、上であげたようなシンプルな操作方法、高遮音性など数多くの良いポイントは、その点を補って余りあります。特に音質の良さはさすがSHUREと言いたくなります。今のところ一番良い音質の完全ワイヤレスイヤホンの決定版は「SHURE AONIC215」で決まりです。
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