AVアンプ市場で一番売れているマランツ「NR1710」。「NR1710」は、前々モデルの「NR1609」と比べ3倍もの出荷台数を達成していることからも、その人気がうかがい知れます。
そして、いよいよ「NR1710」の後継機「NR1711」が発売されます。価格は「NR1710」から据え置きで定価は90000円(税抜)です。
価格が据え置きにもかかわらず、「NR1711」は8K/60Pや4K/120P対応になっていたり、次世代Gmaingフォーマットにも対応など、映像、サラウンド、音質の面でも、大幅に進化したモデルとなっています。
では、マランツの最新薄型AVアンプ「NR1711」の特徴と、前モデル「NR1710」と比較し、どう進化したのかも含めてご紹介します。
マランツ「NR1711」のスペック
搭載パワーアンプ数 | 7 ch |
定格出力 | 50 W + 50 W(8 Ω、20 Hz-20 kHz、THD 0.08 %) |
実用最大出力 | 100 W(6 Ω、1 kHz、THD 10%、1 ch駆動、JEITA) |
適合インピーダンス | 4-16Ω |
SN比 | 98 dB(IHF-A、ダイレクトモード時) |
周波数特性 | 10 – 100 kHz(+1、-3 dB、ダイレクトモード時) |
HDMI端子 | 入力×6(8K対応入力×1)、出力×1 |
映像入力端子 | コンポーネント×2、コンポジット×3 |
映像出力端子 | コンポーネント×1、コンポジット×1 |
音声入力端子 | アナログ×3、Phono(MM)×1、光デジタル×1、同軸デジタル×1 |
音声出力端子 | 2.2chプリアウト×1、ゾーンプリアウト×1、ヘッドホン×1 |
その他の端子 | ネットワーク×1、USB(フロント)×1、セットアップマイク入力×1、Bluetooth/Wi-Fiアンテナ入力×2、 FMアンテナ入力×1、AMアンテナ入力×1、マランツリモートバス(RC-5)入出力×1、DCトリガー出力×1 |
チューナー受信周波数帯域 | FM: 76.0 – 95.0 MHz、AM : 522 – 1629 kHz |
無線LAN(ネットワーク種類 / 周波数) | IEEE 802.11 a/b/g/n準拠(Wi-Fi®準拠) / 2.4 GHz、5 GHz |
Bluetooth | “バージョン4.2 対応プロファイル受信: A2DP 1.2、AVRCP 1.5、送信: A2DP 1.2 対応コーデックSBC 送信出力 / 通信距離Class 1 / 約30 m(見通し距離)” |
電源 | AC 100V、50 / 60 Hz |
消費電力 | 250 W |
待機電力 | 0.2 W(通常スタンバイ)/ 0.5 W(CECスタンバイ) |
付属品 | “かんたんスタートガイド、リモコン(RC035SR)、単4形乾電池 × 2、セットアップマイク、マイクスタンド、 ケーブルラベル、FM室内アンテナ、AMループアンテナ、Bluetooth / Wi-Fiアンテナ×2、電源コード” |
最大外形寸法 | “W440 x H105 x D378 mm (アンテナを寝かせた場合) W440 x H173 x D378 mm (アンテナを立てた場合)” |
質量 | 8.3 kg |
黄色のマーカーで塗られた部分が、前モデル「NR1710」とのスペック表上の違いです。
サイズはアンテナを立てた場合に2mmほど低くなっている程度なので、ほとんど同じです。カラーもシルバーゴールドとブラックの2色展開に変更はありません。
サラウンドや映像面でも「NR1710」からブラッシュアップされ性能が向上しているにもかかわらず、「NR1710」は8.4 ㎏あった重さが「NR1711」で100ℊ軽くなっているところは、マランツの技術力を感じます。
マランツ「NR1711」の特徴と「NR1710」との違い
以下の点は、「NR1711」の特徴であり、同時に前モデルの「NR1710」との違いでもあります。
- 新4K8K衛星放送で使用されている音声フォーマットMPEG-4 AAC(ステレオ、5.1 ch)に対応。
- 8K/60pや4K/120p映像信号のパススルー。
- ゲーム&VR体験の質を向上させるALLM、VRR、QMS、QFTに対応。
- HDR10+およびDynamic HDRにも対応。
- すべてのHDMI端子が最新の映像コンテンツに対する著作権保護技術「HDCP 2.3」に対応。
- HDMI入力、ネットワークオーディオの音質を向上。
- eARC、CECに対応。
- Bluetooth Version4.2に対応。
以上の特徴をこれから順にご説明します。
音声フォーマットMPEG-4 AAC(ステレオ、5.1 ch)対応
MPEG-4 AACとは、MP3よりも高音質高圧縮を目指してMPEGによって標準化された、音声符号化技術。これは新4K/8K衛星放送で使用されている音声フォーマットでもあります。
「NR1711」を導入することで、4K/8Kのように超高解像度な映像と共に、臨場感あふれるサラウンドサウンドを楽しむことができます。
8K / 60pや4K / 120p映像信号対応
前モデルの「NR1710」では4K / 60pまでの対応でしたが、新型の「NR1711」では、HDMI入力1系統(HDMI 6)、出力1系統が新たに8K / 60pおよび4K / 120p映像信号のパススルーに対応。
衛星やインターネットを通して配信される4K8Kコンテンツは従来の液晶テレビと比べ、4Kは4倍、8Kは16倍もの高解像度で映像を楽しむことができます。リビングルームなどで高画質のコンテンツを大型テレビで楽しむ方にとって「NR1711」は最適なAVアンプと言えます。
ゲーム&VR体験の質を向上させるALLM、VRR、QMS、QFTに対応
「NR1711」は、HDMI 2.1の新機能「ALLM(Auto Low Latency Mode)」、「VRR(Variable Refresh Rate)」、「QFT(Quick Frame Transport)」、「QMS(Quick Media Switching)」に対応。
これらは、ゲーム機のハイスペック化や液晶テレビもこれらの機能に対応したモデルが増加したことに加え、前モデル「NR1710」のHDMI端子「GAME」の使用率が高かったことから、改良が加えられた点です。
コンテンツの種類に応じて画質とレイテンシー(通信の遅延時間)のどちらを優先するかを自動で切り替える機能。
例えば、ゲームやVRコンテンツは再生する際にレイテンシーを最小に(遅延時間を短く)し、操作に対して、画質が遅れないように自動で調節する機能。
PCやゲームなどの映像のソースとなる機器と映像が出力されるディスプレイとを同期させ、ディスプレイのチラツキ具合の他、動画やゲームでの滑らかな動きを計る働きをします。
PCやゲームなどの映像のソースとなる機器からの電送速度を上げることで、レイテンシーを低減させる機能。これにより、ゲームやVR機器の映像をスムーズかつシームレスに楽しめます。
映像ソース機器とディスプレイのリンクを維持したままブラックアウトや画像の乱れを回避する機能です。
従来HDMIでリンクしている映像のソースとなる機器とディスプレイ機器において、映像ソース機器がフレームレートを切換えたり、あるいは解像度を切り換えたりすると、ブラックアウトや画像の乱れなどが生じましたが、この「QMS」により解消されます。
これらの対応により「NR1711」は「NR1710」に比べ、PS5、Xboxなどのハイスペックな次世代ゲーム機にも対応した、超高画質、高音質、ストレスフリーに楽しめるAVアンプとなっています。
HDR10+とDynamic HDRに対応
前モデル「NR1710」で対応していたHDR10、Dolby Vision、HLG(Hybrid Log-gamma)に加えて「NR1711」では、HDR10+とDynamic HDRに新たに対応。
これまで以上に作り手の意図に忠実な色彩・コントラスト感などを再現するために、20世紀フォックスとパナソニック、サムスンの3社が共同で起ち上げた新しい技術規格で、ピーク輝度の低い薄型テレビでも高画質化を実現したもの。
HDRのプロファイル情報をシーン単位、フレーム単位で定義可能にしたもの。瞬間、瞬間で適切な最大輝度、bit数による階調表現が可能になったので、明るいシーン、暗いシーン、両方のシーンで、それぞれHDR10の10bit階調を適切に割り当て、従来のHDRに比べ暗部陰影や明部彩度に性能を発揮します。
最新著作権保護技術「HDCP 2.3」に対応
HDMI入力、ネットワークオーディオの音質を向上
マランツのサウンドマネージャーを務める尾形好宣氏が「特に注力したのはHDMI/ネットワークオーディオ系回路のグレードアップ」と語っておられる通り、「NR1711」では、HDMI入力およびネットワークオーディオの音質向上がはかられています。
具体的には、8Kデバイスのパフォーマンスを最大限に引き出すための回路、パーツの選定がなされています。例えば、前モデル「NR1710」のブロックコンデンサーにはエルナー社製のカスタムコンデンサー(6,800μF ×2)が使用されていましたが、「NR1711」では新たに専用で新規開発されたカスタムコンデンサー(6,800μF ×2)を採用したり、基板上のパターンの強化、振動対策を行い、「S / N感」、「音抜け(明瞭感、音像の立体感)」、「音場感の改善」がされています。
eARC、HDMI-CECに対応
前モデル「NR1710」で対応していたARC(Audio Return Channel)に加え、「NR1711」では「eARC(Enhanced ARC)」と「HDMI-CEC(Consumer Electronics Control)」に対応しています。
「エンハンスド・オーディオ・リターン・チャンネル(Enhanced Audio Return Channel)」の略で、従来のARCの拡張版です。非圧縮5.1ch / 7.1chや、HDオーディオ(Dolby Atmos®、Dolby TrueHD、DTS:X™、DTS-HDなど)も伝送が可能となります。
ただし、eARC接続する際は、eARC対応のHDMIケーブルが必要です。
1つのリモートコントローラーのみを使用してHDMI接続デバイスを制御するように設計されたHDMIの機能です。
Bluetooth Version4.2に対応
「NR1711」はBluetoothの規格がVersion4.2の対応になりました。前モデルでは、Version4.1でしたが、このバージョンアップにより転送速度の差が生じます。
通信速度に関しては4.1とはさほど変わりませんが、転送速度が変わることで、音質を向上させるうえで重要な省電力化につながります。
HDMI端子の総数が「NR1710」から減少
前モデル「NR1710」のHDMI端子8系統あったが、「NR1711」では6系統に減少しました。今まで8系統分の機器をAVアンプにつないでおられる方にとっては少しマイナスなポイントになるかもしれません。
「NR1711」と「NR1710」の音質の違い
「NR1711」と「NR1710」では、映像面での変化が大きいですが、上記でも述べましたが音質の面でもしっかりどブラッシュアップされているようです。
「S / N感」、「音抜け(明瞭感、音像の立体感)」、「音場感の改善」がされていることから、全体の音の輪郭は滑らかになり、高域も「NR1710」に比べ角がとれたまろやかな音になっているようです。また、音像の立体感の向上により、ボーカルの定位もよりはっきりとし、より奥行きのある音を楽しめます。
まとめ
マランツ新型AVアンプ「NR1711」は、前モデルと同様のトップクラスの高さ105mmの薄型筐体の中に、映像面の機能の向上だけでなく、音質面でのブラッシュアップもなされ、これでもかというほどの機能が搭載されています。
これから超高画質、高音質の映像やゲームを家で楽しむ機会がますます増える中、8K / 60pおよび4K / 120p映像信号のパススルーになどの次世代に対応した「NR1711」は、またもやAVアンプ市場を賑わす1台です。
コメント
[…] […]